大学一年生も今日の授業(テスト)で最後だ。
記念すべきラストを飾ったのはドイツ語のテストである。
昨年は100人中約10人を留年へと追い込んだ悪代官様である。
そして、今年は・・・??
このドイツ語、週に2回授業があるためにテストも二回あるのだ。
そして第一回目のテストが3日前に行われた。
そのテスト終了後約3時間、我々(K氏も含む)が他のテストを受けていた時、突然K氏の携帯がメールの到着を知らせた。
もちろんテスト中なのですぐに見ることはできない。
テスト終了後、みんなで答えの確認をしていた時、
突然謎の笑みを浮かべたK氏が自分の携帯を私に渡してきた。
なんだろう?と、K氏の謎の笑みにいやな予感を感じながらも私は携帯の画面を覗いてみた。
するとそこにはこう書いてあった。
「このメールを受け取ったあなたは今日のドイツ語試験の結果が思わしくありませんでした。まだ三日後の試験がありますので、次のテストで好成績を取るように努力してください。」
・・・・・
なにやってんだ〜(笑)
この、いかにも迷惑メールっぽい書き出しは最高である。
しかも、思わしくないって言い方もおもしろすぎる。
ちなみにK氏にテストの出来を聞いてみると、
K「ん〜、まぁ左半分はほぼ白紙だったかなぁ。何て書いてあるんか、単語がわからんけぇさっぱりだったよ。」
と、ダメダメな返事をしてきた。
テストの半分が白紙=良くて50%だから、合格点(60%)には到底及んでない。
つまり、点数が思わしくないのである。
まぁこんなメールが来るのも納得である。
私の大学では、外国語の単位を2つ落としたら留年になってしまう。
つまり、K氏はこのまま次のテストを単語もわからない状態で受けたならば、留年確定となってしまうのである。
言い換えると、留年に「リーチ」しているといっても過言ではない。
そんなピンチなK氏をよそに、周りの友人達(私も)はK氏を笑っていたのだった。
その時突然K氏が口を開いた。
K「ど〜しよ。これマジで留年になりかねんわ。(泣)」
私「いやいや、6割くらい簡単でしょ。しかもほとんどテストと同じプリント(B5が2枚)あったじゃん?!」
K「う〜ん、あれは一枚目を覚えるのがやっとだったからなぁ・・・」
衝撃の事実発覚です。
テストとほぼ同じ問題が載ったプリントがあったにもかかわらず、K氏は一枚しか見てなかったのだ。
それではテストの出来が5割というのもわからないでもない。
私「テストなんだし一応2枚目まで勉強しようよ・・・。」
K「ふむ、君は僕の実力を知らないようだな。(以下K氏の実力のすごさの説明)」
一体K氏の実力とはどんなものなのだろうか?
実はK氏
極度のアルファベット恐怖症
なのだそうです。
(なんだそりゃ?)
どれくらいアルファベットが苦手かというと、see(見る)の過去形sawがわからなくて辞書を使用するくらいなのだそうです。(2005年2月現在)
これくらい誰でも覚えるだろっ!!
と、みんな突っ込みを入れるはずです。
もちろん僕も間髪をいれずK氏にビシッと言いました。
すると、K氏はこう言いました。
K「いや〜、アルファベットは何回見ても書いてもすぐ抜けていくんだわ〜」
seeの過去形くらい中1でも書けるわ〜
ヘコんでいるK氏に次の日から一緒ににドイツ語の勉強をする約束をして、その日は別れた。
そして次の日からK氏にとって地獄の日々が始まることとなるのである。
(注)先程述べたように、K氏は極度のアルファベット恐怖症である。
<地獄その1>その日が提出期限の英語のレポートが存在する
<地獄その2>2回目のドイツ語のテストに関する練習プリントは前回の3.5倍の7枚
<地獄その3>次のテスト(ドイツ語)がラストのため、ドイツ語しか勉強できない
<地獄その4>ドイツ語の試験の次の日にTOEIC(英語)がある
というふうに、これから3日間はアルファベット三昧地獄なのである。
しかも今回は留年という大きな重圧がのしかかっているので気が抜けないのだ。
早速われわれはプリントを勉強することにした。
開始10分、私は1枚目のプリントを終え2枚目に入ろうとしていた。
一方K氏は、まだ1枚目の半分くらいのところで「うんうん」うなってます。
これは驚いた。
話ではアルファベットが苦手と聞いていたがここまでとは・・・
そしてうなること約3時間、ようやく1枚目を終えたようだ。
と、ここである疑問が浮かんだ。
このペースで果たして間に合うのだろうか・・・?!
単純計算で7枚のプリントを終えるのは7枚×3時間で21時間必要である。
ちなみに次のドイツ語までの残り時間はその時点でもう40時間を切っています。
しかも地獄その1であったように、K氏は嫌いな英語のレポートを前日から書いており、体力(精神力)をほとんど使い果たしています。
そしてK氏はこう言いました。
K「いかん。もう体がアルファベットを拒否している。」
なんだそりゃ??
そこで2枚目に突入したK氏の様子をしばらく確認していると、なるほど、確かに拒否しているではないか?!
だって、
10回私の目の前でschreiend(求める)と書いた数分後、schrie…と間違っているのです!!
これではもう先には進めません。
仕方がないのでその日は終了とし、次の日の昼からまた勉強する約束をして解散することにした。
そして次の日、K氏がやってきました。
ちなみに現在の残り時間約27時間。
そして残り枚数は・・・
なんと4.5枚!!
この調子で間に合うのだろうか?!
しかもK氏、あれから家に帰って無謀にも3枚目をトライしてしまったために、睡眠時間が4時間と言っております。
そしておもむろにかばんを開け、カフェレットとかいういかにもカフェインが入ってそうな錠剤をとりだした。
なんと早速ドーピング剤を使用する模様です。
これで効率を上げて一気に終わらせるつもりのようだ。
しかし、世の中そんなに甘くはない。
昨日の復習として、一枚目と二枚目を解いてみると・・・
なんと、6割もあってません!!
昨日の勉強は何だったのか?と、問い詰めたくなる勢いだ。
しかもこのままでは本当に留年です。
その時、K氏は突然口を開いた。
K「よし!」
僕「??」
K「先生のところに行って、できませんと直訴しに行こう!」
??????
なんとK氏、早くもあきらめモードです。
教科書を2回ずつ写してくるからそれで勘弁してもらう、とか言っています。
でも、絶対無理です・・・
K「でさぁ、俺について来て『彼ホントに頑張ったんです!』ってアピールしてくれん?」
アピールせんでもみんな留年を前にしたら頑張るのでは・・? と思いながらも、
私「う〜む、確かに頑張ってはいるが・・・。本気で行く気なの?」
と、聞いてみたところ、彼は即答でした。
K「無論、マジだ」
彼のずば抜けた行動力に、『その行動力を勉強に使おうよ!』と思っていても口に出さずに自転車にのること数分、われわれは大学に到着した。
その大学までの道でK氏はこんなメールを見せてきた。
FROM : P子
『○○先生がK氏と○○君と○○は次のテストで頑張らないと落としますよって言ってたらしいよ!!ファイ!』
K「こんなん送られたらマジでヘコむわ〜。前のテストも頑張ったんよ、一応・・・。」
私「確かに昨日今日の様子を見てたら前のテストも頑張ってたのかもしれん・・・」
さすがのK氏も留年の危機の御指名を受けてショックを隠しきれない様子です。
そうこうしている内に大学に到着し、いよいよ先生の研究室に突入です。
K氏もさすがに緊張しているのか口数が減っています。
そして、おもむろに扉をノックした・・・
先生「おぉ、どうした?」
K「えっ、い、いや〜、・・・あの〜、前回のテストってどれくらい悪かったんですかねぇ?」
動揺したのか目的と全く関係のないことを口走っております。
先生「う〜ん、悪かったとしかいいようがないなぁ。でも簡単だったでしょ?」
先生、何気に痛いことを言います。
K「えっ?!あれはちょっと全然単語が読めなくて・・・非常に難しかったのですが・・・」
先生「ん〜、でも他のみんなはよくできてたよ。ちゃんと勉強したの?」
K氏、 痛 痛 痛
K「しっ、しました。ものすごく頑張りました。でも単語がどうやっても覚えられないのです。」
K氏、さすがは後がないだけあって必死の抵抗を見せます。
先生「でも簡単な単語だしねぇ」
K「あの〜、どうやって覚えればいいのでしょうか?」
先生「どうやってって?そりゃあ・・書いたら覚えれるでしょう。あれくらいの単語なら・・・」
先生の言葉がK氏をグサグサと貫通していきます。
K氏、もうノックダウン寸前です。
先生「まぁ、頑張ってとしか言いようがないなぁ・・」
K「そ、そうですかぁ・・・、ハイ・・」
先生にとどめを刺されたK氏はドーピング効果も虚しく、何も収穫のないまま時間だけを浪費して家に戻ることとなってしまった。
行く前までのあの勢いはどこに行ったのやら?
現在の残り時間約22時間。
残り枚数4.5枚です。(減ってねぇ〜)
と、ここで僕のもとに一通のメールが届いた。
『今日のクラブに行く?』
・・・、目の前のK氏をとるか、それともクラブをとるか、難しい選択を迫ってきます。
そして、ふと日にちをみると、なんと今日はサッカー日本代表の北朝鮮戦(W杯予選)があるではないか?!
サッカー好きとして、北朝鮮戦は見逃せない試合だ。
条件を整理してみると・・・
・クラブに行く→前半が少し見れない
・K氏と勉強→試合をみたらK氏が本気で留年してしまうかも→試合は見ないほうがいい
これから導き出せる結論は・・・
もちろんクラブ!
前半が少々見れなくても全部見れないよりは全然イイ!!
そして、家に着くと私はK氏にクラブに行くことを告げた。すると・・・
K「(私の名前)〜、俺を見捨てないでくれ〜。」
いいえ、見捨ててなんかいません、サッカーが見たいがためにあなたのことを思って私はクラブに行くのですから・・・
僕「いや、大丈夫だ!君なら」
と、無責任な発言を残して私はクラブ→サッカー観戦へと向かった。
もちろんそれだけでは、『負けない心・勝てない力』を持ったK氏があまりにも可哀相なので、サッカーの試合後にまた一緒に勉強する約束もしておいた。
そして、私はクラブへと向かい、その後サッカーを観戦し、またK氏と勉強する時間となった。
ちなみに残り時間約17時間、残り枚数3.5枚。
私がK氏を見捨ててクラブおよびサッカー観戦をしている間に少しばかり進んだようだ。
しかもK氏、新たなドーピング剤を持ってきています。
眠眠打破およびリポビタンD、合わせて\500也。
あまりいい効果をもたらさなかったカフェインはあきらめ、今度はタウリンを服用する模様です。
『いいかげんドーピングなんかに頼らずに普通に勉強しろよ〜』と、思っていても口には出さないのが友達というものです。
しかし、K氏の前に新たな強敵が現れたのだ!
プリントbSが全く覚えられないのだ。
何回やっても70%近くの誤答率です。
これでは先に進めません。
時間だけが過ぎていき、ついにタイムリミットまであと12時間となってしまった!
言い換えると、K氏の留年決定まであと12時間!?
さすがにK氏も動揺を隠し切れません。
bSの正答率が5割くらいになったところで次のプリントへと大急ぎで進んでいきました。
そして、次の朝また一緒に勉強する約束をして、その日も解散となった。
とうとう試験まで残り5時間、K氏が最後の戦いをするために私の家にやってきました。
どこまで進んだのか気になります。
そしてK氏が出したプリントbヘ・・・
7!
なんとラストプリントです!
他のプリントの正答率はさておき、一応時間内に一通り目を通すことはできそうです。
しかし、その分K氏はとてつもなく精神力を使い果たしています。
そして、またもや持ち込んだドーピング剤で気合を入れると、ラストスパートをかけ始めた。
みるみる時間は過ぎ、ついにテストまで2時間、あとは今までのプリントを見直すだけです!
早速プリントbPから問題を解きなおしていきます・・・
しかし、世の中そんなに甘くありません。
いきなり僕の目の前で間違った答えを連発させています。
しかも本人気づいていません・・・
『あぁ、これでK氏とはお別れか・・・ネタを作る人がいなくなってしまうなぁ』と、思いつつも間違ったところを教えていきます。
そして、ついにタイムリミット・・・
テストの時間です。
会場に入るなりK氏、みんなに応援を受けています。
そして、運命のテストが始まり、一時間後終了のベルが鳴り響きました。
果たしてK氏の結果は??
留年か・・・ それとも合格か?
なんとK氏、8割も取って見事合格しました!
いや〜、よかったよかった。
K氏はあまりの疲労でぐったりです。
まぁ、見てるほうとしてはすごく面白かったけどね。
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